藤堂高虎

藤堂高虎が「世渡り上手」なのは本当なのか

藤堂高虎さんはよく、「世渡り上手」と言われます。

本当にそう?
私の考えはちょっと違います。
世渡り上手にしては、かなり不器用な人生を歩んでいるのではないかと思うのです。

そもそも世渡り上手なら、こんなに転職しないのでは?

高虎さんは転職マスターです。
で、その転職理由はこんな感じ。

  • 浅井家「同僚を斬り殺しちゃったから」
  • 阿閉家「同僚を斬り殺しちゃったから」
  • 磯野家「主君の方が変わったので、転職した覚えはない」
  • 津田家「仕事が増えたのに給料据え置きだったから」

どこが世渡り上手なのか…
少なくとも若い頃の高虎さんはただの「危険人物」です(笑)

でも個人的には、津田信澄(織田信澄)の所の転職理由は大好き。
そうだよそうだよ。大事だよね!と思います。
現代人もそうでありたい!

そして、人生の後半の転職理由はこんな感じ。

  • 大和大納言(豊臣秀長)家「家の方が無くなったから、武士を辞めます」
  • 出家からの復帰「天下人(豊臣秀吉)に戻れって言われたから」
  • 豊臣家「徳川家の方が見込みがあると思ったから」

ここでちょっと世渡り上手感が出てきましたが…

特に言われるのが、

  • 出家したのにすぐ戻ってきて、しかもめっちゃ領地増えてる → わざと出家したでしょ!
  • 豊臣家というものがありながら、一番に徳川家に靡いた → 旧主を早々に放り出したでしょ!

という所。

出家がわざとって言うのは、ちょっと意地悪な見方だなぁって思います。
高虎さんが本当に出世のために出家したのなら、はっきり言って、豊臣秀長の供養なんて途中で辞めちゃえばよかったのです。
それなのに江戸幕府になってからも法要を行っている。
この頃の秀吉は秀次事件とほとんど時期が一緒…つまり、何をしでかすかわからない状態だったわけで、賭けにしては、なかなか勇気のいる賭けです。

徳川に乗り換えた件。
この時点で「秀吉はすでに死んでいる」というのは注目したいポイントです。高虎は秀頼の家来になったつもりは無かったのかもしれません。
さらに言うと、これは裏切りなのでしょうか?戦の最中に裏切ったわけでは無いですし、そもそも家康はこの時点では豊臣家の重臣。その重臣が下克上しちゃっただけで…(と言っても、止めなかったですけど)
まぁでも、特に徳川家に乗り換えた武将、江戸まで続いた家は(徳川譜代の家臣以外は)全部そうでしょう。別に藤堂高虎だけじゃないですよ。

小賢しい逸話が沢山残っているのは、そもそも世渡り上手ではないから?

藤堂高虎はたくさんの逸話で知られます。
「出世の白餅」など好意的なものもありますが、中には見方によっては小賢しいものも。

高虎は自分が死んだら嫡子の高次に伊勢から国替えをしてほしいと家康に申し出た。家康は「どうしてだ?」と訊ねると「伊勢は徳川家の要衝でしかも上国でございます。このような重要な地を不肖の高次がお預かりするのは分に過ぎます」と答えた。しかし家康は「そのような高虎の子孫ならこそ、かかる要衝の地を守らねばならぬ。かつて殉死せんと誓った二心の無い者たち(前述)に守らせておけば、もし天下に大事が起こっても憂いが無いというもの。そちの子孫以外に伊勢の地を預けられる者などおらぬ」と述べたという[23][24]。

Wikipedia

普通に見れば「高虎は家康に信頼されていたんだなぁ」です。
しかし意地悪な見方をすれば「高虎はそうやって領地替えをしなくていいように仕向けたんだなぁ」とも読めます。

でもそもそも、本当に世渡り上手ならこの話、残ってないと思うんです。
他の武将に色々言われるのわかってるじゃないですか。

それでもこの話は残った。
家康が言いふらしたから?高虎が言いふらしたから?それとも、聞いていた第三者が?

家康が言いふらした可能性は低いと思っています。なぜならこのあと、高虎さんは二代将軍の秀忠から領地替えを提案されているからです(会津に領地替えされそうになったが断っている)。
家康さん、秀忠さんに伝え忘れていた可能性があります(秀忠さんが知っていて提案した可能性もありますが)。

高虎さんが言いふらす事は無いと思います。得しませんもん。秀忠さんから領地替えを提案された時にこれを理由にして断った可能性もありますが…そしたら言いふらしたのは秀忠さんかその側近?

第三者の可能性ですが。
もし最初から家康が領地替えをしないとわかっていてこの話をしたのであれば、高虎さん、第三者に聞かれる場所では言わないんじゃないかしら。
もしくは、信頼できる人がそばにいる時にしか話さないと思います。

つまりこの話、結果がわかっていて高虎さんが家康に言った可能性は低いのではないかと思っています。
そして家康ほどの人が、高虎さんの魂胆を見抜けないはずがないのでは?とも思います。

世渡り下手だからこそ、この逸話が残ったのではないかと思うのです。

結果から見ると世渡り上手に見える、しかし実際はそうではなかったかも

歴史を知ると、どうしても結果から考えてしまいます。

信長は光秀が裏切ることをわかっていた
秀吉は家康が危険だとわかっていた
家康は最初から天下を狙っていた

はたして実際は?

信長は光秀が裏切ると思ってなかったから、無防備で本能寺にいた
秀吉は家康を信頼していたから、豊臣政権の大老を任せてしまった
家康は最初天下を狙っていなかったが、途中で天下を狙う事にした

私は常に両方の視点が必要かなと思っています。

「藤堂高虎は転職を繰り返し、徳川家に信頼され、幕末まで続く藩の基盤を作った」

これは間違いない事実。
そこには

  • 偶然そうなった
  • 全部狙ってやった

どちらかに偏るのではなく、どっちの可能性もあるよな〜という視点を、常に持ち続けていきたいなと思います。